イベント・講演
2025年10月30日
【Corporate Pitch #23】〜ヒト・コト・ココロの可動性を広げる〜 e-Paletteのご紹介
トヨタ自動車株式会社 エアロ・モビリティ事業部 太箸 匠真氏
〜ヒト・コト・ココロの可動性を広げる〜
e-Paletteのご紹介

MONETコンソーシアム加盟企業のみなさまの共創を促進するMONET Meet UP Corporate Pitch。
今回は2018年に北米のCES(Consumer Electronics Show)で発表し、約7年の歳月を経て、2025年9月15日からいよいよ発売が発表された「e-Palette」(イーパレット)をご紹介するため、トヨタ自動車様に登壇いただきました。
e-Paletteとは
「子供の頃、よく絵の具のパレットを使って自由な発想で絵を描いていたと思います。このe-Paletteはその名の通り、自在に色合いを変えられる『パレット(絵皿)』のように、利用される方の用途によってさまざまなモビリティサービスを提供できるプラットフォームになれます。 このように、単なる人々の移動手段にとどまらず、ご利用される方の自由な発想によってさまざまな使い方を通じて、新たな移動体験を可能にできる車両です。」

3つの提供価値
次にe-Paletteが提供する3つの価値についてご説明いただきました。
「ヒト/コト/ココロの可動性を広げ、すべての人に移動の自由を提供し、移動を通じて心まで動かすモビリティ社会の実現を目指しています。」
1 – ヒトが動く
乗り降りがしやすいよう、低床、大開口のスライドドアにより、短時間での乗降を可能にしています。また車高調整機能で100mm下げることができ、電動スロープが出ることで、車いすの方も自力で乗降することが可能となるよう、アクセシビリティに配慮されています。
2 – コトが動く
現在はどこかの場所に行ってサービスを受けることがほとんどですが、広い室内空間を利用してサービス自体を運ぶことができ、『サービスがやってくる世界』を実現することができます。
3 – ココロが動く
少し抽象的な表現になってしまっていますが、新たな移動体験を提供することで、ご利用される方の「ココロ」に響き、感動するような未来を創出することができます。

e-Paletteの開発状況
またe-Paletteの自動運転も含んだ開発状況についてもご説明いただきました。
「e-Paletteというと自動運転を想起するかと思います。現在、e-Paletteは手動運転と自動運転の2種類を開発しています。 それぞれ実証を行い、実証結果から判断をしたのち社会実装というステップを踏んでおり、手動運転に関しては社会実装に向けた準備を進める状況まで来ております。
また、自動運転については運転の自動化レベル2相当の自動運転システムに対応可能な車両となっており、今後、様々な実証を経て2027年度にはレベル4に準拠した自動運転システム搭載車の市場導入を目指しております。」

ここからは手動運転でのe-Paletteでの実証事例を3つほど紹介いただきました。
実証事例のご紹介① (シャトルバス実証)
「愛知県豊田市にある鞍ヶ池公園にて園内の回遊性を高めることができるか?といったところから、こちらの実証を実施しました。坂が多い公園でもあるため、園内の移動手段として大変好評をいただきました。
また、大開口のスライドドアや電動スロープが出ることで、ベビーカーを畳まずにそのまま乗車できるなど、お子様連れの利用者からも喜びの声をいただきました。」

実証事例のご紹介② (移動販売実証)
「続いては、移動販売の実証についてです。
富士スピードウェイでサーティーワンアイスクリームの移動販売車として活用いたしました。富士スピードウェイで開催されるレースなどのイベント時にはサーティーワンアイスクリームの常設店舗があるのですが、レースウィークとなりますと何万人もの観客がいることと、サーキットの広い敷地を歩いて買いに行かなければならない状態でした。これをe-Paletteの移動販売を実施することで、需要に合わせて移動することで、売上が通常の3倍になることが確認できました。 」

実証事例のご紹介③ (移動エンタメ実証)
「次に移動エンタメ実証です。
こちらは、愛知万博の跡地である愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で、移動しながら動画を見たり、ゲームをしたりする実証を実施しました。
利用された方からは、笑顔が溢れ、移動時間を『楽しい時間』に変え、移動体験の新しい価値を確かめることができました。」

実証事例のご紹介④ (マルチタスク実証)
「最後にマルチタスク実証です。
車両の中を「換装」することで、1台でマルチに利用することができるか?の実証となります。1日の中で異なる車両ニーズに応えることができます。例えば朝夕は人の移動が多いことから、人を乗せて、日中帯は移動コンビニとして活用することで、車両の稼働率も上がります。「換装」自体もわずか10分で切り替えられることができ、ニーズに合わせて即座に対応することができることを実証いたしました。」

e-Paletteの車両スペック / 装備
続いてe-Paletteの車両スペックや装備についてお話いただきました。
「e-Paletteのサイズは全長4,950mm / 全幅2,080mm / 全高2,650mmとなります。
乗用車との比較ですと、現行のアルファードが4,995mm / 1,850mm / 1,935mmのため、アルファードの背を高くしたようなサイズ感となっております。
バスタイプとの比較ですと、よくロケバスなどに使用されている『コースター』の長さを2/3ぐらいにしたサイズとなります。
定員は17名で、動力はEVとなっております。」


「その他、先進装備として、次世代の操舵感覚をもたらす『ステアバイワイヤシステム』を導入し、ハンドルを何度も回すことなく操作ができることで 、運転手の負担を軽減しています。
また利用シーンに応じた表示が可能なデジタルサイネージを車内外に装備し、サイネージソフトも提供させていただいているので、お客様自身で様々な情報を発信することが可能となっています」


「EVですと電池容量や充電時間、航続距離が気になるかと思います。
電池容量は72.82kWhで、充電時間は急速充電(DC90kW・200A)で約40分、ご家庭でも使用できる普通充電(AC6kW・30A)で約12時間となっております。
航続距離はWLTCモード相当で約250km走行することができますが、外気温やエアコンの使われ方によっても異なってきます。」
「EVということで災害時の電源確保にも活用することができます。
e-Paletteと同等の電源を確保しようとするとポータブル電源23個分に相当し、重量は630kgにもなります。23個ものポータブル電源を管理・運用するのは現実的ではありません。e-Paletteは有事の際にも活用することができます」
e-Paletteの販売形態 / 補助金について
また、e-Paletteの販売形態や活用できる補助金についても言及いただきました。
「現状は6年間のフルメンテナンスリースでのご提供となります。車両本体にプラスしてメンテナンスや税金、自賠責保険料なども全て込みでご提供をさせていただきます。

講演の最後には、
「トヨタ自動車は、すべての人に移動の自由を提供し移動を通じて心まで動かすモビリティ社会の実現を目指して、モビリティの可能性を広げてまいります。」
という言葉で締め括られました。
今回のMONET Meet Up Corporate Pitchはいかがでしたでしょうか?
いよいよ販売が発表されたe-Palette。先進技術を装備した未来の乗り物が、街の中でさまざまなサービスを提供する姿はもうすぐですね。MaaSの可能性はこの車両で更に広がるのではないでしょうか。
MONET MeetUPではこれからもMaaS事業に取り組む事業者の方々にとって価値あるプログラムを開催して参りますので、引き続きみなさまのご参加をお待ちしております。