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導入事例

山口県周防大島町

過疎化と分娩施設休止の危機に挑む、医療サービスと行政サービスを乗せたモビリティがつなぐ離島の未来

  • #近畿・中国・四国
  • #個宅訪問型診療
  • #妊産婦健診
基本情報
自治体名 山口県周防大島町
人口/高齢化率 人口約1.2万人/高齢化率約56.2%
(令和7年10月時点)
対象エリア 町内全域
診療領域 内科(慢性疾患)、妊産婦健診(産後2週間健診)
運行モデル 個宅訪問型
主幹事 周防大島町 総務部 政策企画課 / 病院事業局

医療MaaS導入事例(山口県周防大島町)

医療と行政の統合モデル。内科慢性疾患から妊産婦支援まで、1台のモビリティで安心を届ける取り組み。
 山口県周防大島町は、瀬戸内海で3番目に広い島であり、起伏の激しい山地が広がる地形と高い高齢化率を抱えている。公共交通機関の縮小や診療所の不足により、高齢者の通院負担や医療アクセスの確保が重大な地域課題となっていた。さらに、近隣地域における分娩施設の休止に伴い、妊産婦が島外の医療機関まで長距離移動を強いられるなど、地域医療の提供体制の維持と子育て環境の整備が急務となっていた。町はこれらの構造的課題を解消するため、さまざまな用途で利用できるマルチタスク車両を活用した「医療・行政MaaS」の導入に踏み切った。

 本事業では、行政機関が交通とシステム基盤を担い、町立病院をはじめとする地域医療機関が医療サービスを提供する連携体制を構築した。専用のマルチタスク車両には、遠隔診療システムや各種測定機器を搭載し、衛星通信機器を導入することで、島内の通信が不安定なエリアでもスムーズな遠隔診療を可能にした。看護師が同乗して患者宅を訪問する「個宅訪問型」を軸とし、主治医による慢性疾患の定期受診を実施している。また、医療MaaSの運行の空き時間を活用し、スマートフォンのデジタル相談などに応じるデマンド移動型行政サービスや、住民の生活圏での出張健康相談会を展開するなど、車両を多角的に運用している。 さらに、東和病院の駐車場で「車内見学会」を定期開催するなど、住民が事前に車内空間を体験して心理的ハードルを下げられるような活動も展開した。

 今後は、内科の慢性期診療にとどまらず、令和8年7月から毎月第2・第4木曜日の午後に大島病院で再開した妊婦健診に合わせた医療MaaS車両の新たな運用連携を開始するとともに、助産師・看護師が訪問する妊産婦サポートを本格化させていく。医療と行政の垣根を越え、島内のどこに暮らしていても必要なサービスにアクセスできる、持続可能な地域インフラの構築を進めている。

導入前の課題と導入後の成果
Before(課題)

高い高齢化率と坂道の多い島特有の地形により、自力通院が難しい高齢者が増える一方で、路線バスの減少や家族の送迎負担が限界に達していた。
さらに分娩施設の休止によって妊産婦の島外への通院負担が増大し、受診控えや精神的負担が懸念されていた。
既存の「住民が移動する」だけのサービス提供だけでは解決できない医療・行政アクセスへの課題が顕在化していた。

After(成果)

医療MaaSの導入により、利用した慢性疾患の患者からは「急な坂道を上り下りして遠くの病院まで行かなくても、自宅のすぐそばで先生と顔を合わせて相談できるので安心だ」との声が上がっている。
また、令和8年7月から大島病院で毎月第2・第4木曜午後に再開された妊婦健診に合わせて医療MaaS車両による手厚いサポート連携が始まったほか、出産直後の産婦にとって負担となる「産後2週間健診」においても活用され、自宅付近で助産師や看護師の見守りのもと、落ち着いて問診や育児・健康相談が受けられるようになった。
医療と行政が一体となって住民のもとへ赴くことで、過疎や移動の壁を乗り越え、誰もが住み慣れた島で安心して暮らし続けられる確かな体制が構築されつつある。

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